Q.
8月に入り樹木の葉に寄生する病気についての質問が数件ありましたので、代表的な病気について、病徴と予防方法について記載します。
A.
葉に寄生する病気には、皆さんもご存じのうどんこ病、すす病、さび病、もち病、炭そ病などがありますが、その他に灰色かび病、ごま色斑点病、環紋葉枯病、輪紋葉枯病、病原菌は色々ですが葉斑病、葉枯病・斑点病・褐斑病・角斑病・褐色円星病・先葉枯病・すすかび病などがあります。
文献と経験をもとに、いくつかの病気の特徴と予防方法を記載します。
うどんこ病は、葉の表や裏・茎などに白色の粉を撒いたような病班を生じますが、中にはカシ類の紫かび病のように葉裏に褐色のビロード状物を生じるものもあります。
新芽や茎が侵されると奇形を生じる場合(サルスベリ、ハナミズキなど)も少なくありません。
すす病は、葉・新梢・枝・幹などに真っ黒なススを撒いたような病患部を生じます。
アブラムシやカイガラムシ類の排泄物に寄生し、樹木にも影響を与える病気です。
予防方法は、アブラムシ類、カイガラムシ類を防除することにつきます。
さび病は、葉・茎・枝・幹・果実に発生しますが、葉に発生した病班上には黄色の粉状物を生じます。
また、筒状の突起物を生じることもあります。
2種類の植物(樹木と樹木、草本と木本植物など)の間を行き来する病原菌も多いので、予防するにはやっかいな病気です。
もち病は、葉・新梢・果実を侵し、樹種によって色々の病状を呈しますが、一般的には患部が肥厚して光沢のある淡緑色になり、やがて患部は白色粉状物で覆われます。
その後、乾燥してミイラ状になり何時までも着生して見苦しいものです。
炭そ病は良く言われる病気ですが、樹木には潜在的に潜伏している場合も多く、樹木側の感受性が高まると急激に発症することも多い病気です。
黒褐色の斑点が多数形成され、やがて拡大して暗褐色の不整斑となり、激しい被害では苗・新梢・幼葉は枯死します。
枝・茎などでは紡錘状の壊死部を生じ、激しい場合には枝枯れ・茎枯れを生じます。
灰色かび病は、苗・花弁・蕾・幼梢・新葉に発生しますが、葉の場合には病原菌に侵された花弁が落花・付着した部分から発病します。
病斑は不整形で退色し、やがて褐色から灰白色に変わります。病班上には灰白色の胞子粉塊を多量に生じます。
環紋葉枯病は、夏以降に発生することが多く、黄褐色、灰褐色、灰白色または褐色の大型のはっきりした輪紋状斑点を生じます。
病班の裏面には白色の糸くず状、紛状の繁殖体が形成されます。
輪紋葉枯病は、初夏の頃から新葉に発生します。
葉に褐色~淡褐色の円状斑を生じ、すぐに拡大して大型の輪紋~環紋斑となります。
病班表裏両面に、黄白~淡褐色の小さく盛り上がった皿状菌体(径0.5mm内外)を多数形成します。
病樹は夏から秋に落葉しては新葉を展開し、二度吹き三度吹きの現象を起こし、樹勢を著しく衰退させます。
シュードサーコスポラ属の病原菌による葉の病気は数が多く、色々の病名で記載されていますが、予防方法が同じなので一括して述べてみます。
病名が色々あるように病班の色や形は異なりますが、病班上に灰白色~灰緑色の毛ばたったすすかび状物が形成される特徴(標徴)を持っています。
予防方法ですが、被害患部を早めに切除し、病落葉はきれいに除去することが基本です。
次に、毎年発生する株には、発生時期を見計らって予防的に殺菌剤を散布します。
発生時期が判らない場合には、発生初期に殺菌剤を散布して被害の拡大を予防します。
各病害には次のような殺菌剤が記載されています。
*うどんこ病
樹木類;トリフミン水和剤(3000倍)、マネージ乳剤(1000倍)、モレスタン水和剤(2000倍)、ヒットゴールド液剤AL(原液)、ムシキン液剤AL(原液)
カエデ;ベルクートエアゾル
イヌマキ;ヒットゴールド液剤AL(原液)、ムシキン液剤AL(原液)
コデマリ ;モレスタン水和剤(2000~3000倍)
サルスベリ;サンヨール(500倍)、パンチョTF顆粒水和剤(2000倍)、ベニカX乳剤(500倍)、ポリベリン水和剤(1000~2000倍)、マネージ乳剤(500~1000倍)、サンヨール液剤AL・ヒットゴールド液剤AL・ムシキン液剤AL(原液)、マネージエアゾル、ベルクートエアゾル、オルトランC
ジンチョウゲ;マネージ乳剤(1000倍)
セイヨウキンシバイ;マネージ乳剤(1000倍)
ハナミズキ;ベニカX乳剤(500倍)
ボ ケ;ストロビードライフロアブル(3000倍)、マネージ乳剤(500~1000倍)
マサキ;パンチョTF顆粒水和剤(2000倍)、ポリベリン水和剤(1000~2000倍)、マネージ乳剤(500~1000倍)、マネージエアゾル
ポプラ;マネージ乳剤(1000倍)
ヤナギ;マネージ乳剤(1000倍)、モレスタン水和剤(1000倍)
*さび病
セイヨウキンシバイ;ストロビードライフロアブル(3000倍)、マネージ乳剤(1000倍)
ビャクシン(赤星病);石灰硫黄合剤(40倍)、バシタック水和剤75(冬胞子膨潤前に500~1000倍)
ボケ(赤星病);ストロビードライフロアブル(3000倍)、マネージ乳剤(500~1000倍)、ムシキントール(500倍)、ホッコーオルトランMP、マネージエアゾル
ヤナギ;グリーングラス水和剤(1000倍)、バシタック水和剤75(1000倍)、バイレトン乳剤(1000倍)
ヤナギ(葉さび病);ストロビードライフロアブル(3000倍)、マネージ乳剤(1000倍)
*炭疽病
樹木類;トップジンM水和剤(1500~2000倍)、三共ペンコゼブ水和剤(600倍)、クミアイペンコゼブ水和剤(600倍)、ベンレート水和剤(2000倍)
ヤナギ;ゲッター水和剤(1000倍)
*もち病
ツツジ類;Zボルドー(500倍)、バシタック水和剤75(1000倍)
ツツジ;グリーングラス水和剤(1000倍)
シュードサーコスポラ菌
樹木類;三共ペンコゼブ水和剤(600倍)、クミアイペンコゼブ水和剤(600倍)
スギ(赤枯病);兼商ステンレス(1000~1500倍)、エムダイファー水和剤・マンネブダイセン水和剤(400~600倍)
*輪紋葉枯病
樹木類;ベンレート水和剤(2000倍)
*ごま色斑点病
樹木類;ベンレート水和剤(2000倍)
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教えてください。上記の病気に該当しないように見えますので。
花桃の木に葉が、縮れて水ぶくれのようになり、落ちてしまいます。
病名と対処法を教えてください。
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状況を確認したわけではないので確定はできませんが、
発芽後間もない新葉に発生する縮葉病だと思います。
赤みをおびた火ぶくれ状の病斑が現れ、やがて葉は分厚くでこぼこに膨れ奇形を呈します。
やがて病斑の表面に白粉を生じ、黒褐色に腐敗して落葉します。
病原菌は枝や芽の付近で越冬し、翌春胞子が雨で飛散し、新葉に感染します。
防除方法ですが、発芽直前までに樹全体にたっぷり殺菌剤を散布します。(下記のいずれかひとつ)
1)石灰硫黄合剤 7倍 休眠期(発芽前)
2)カスミンボルドー 500倍 開花期まで
3)フジオキシラン水和剤 500倍 発芽前~開花直後
4)トモオキシラン水和剤 500倍 発芽前~開花直後
5)オーソサイド水和剤80 600倍 発芽前
以上、参考になさってください。(小河)