Q.
家に植栽している十数年たったマツの全身の針葉が急激に退色し、やがて褐変しました。
原因はなんでしょうか。防除方法はありますか。
A.
おそらくマツの材線虫病(松くい虫)の被害でしょう。
普通、お盆を過ぎた頃から全身の針葉が急激に退色し、お話しのように褐色になって先端部が下垂します。
針葉が退色する頃には、樹脂の滲出がなくなっているものです。
森林では、幹や太枝にマツノマダラカミキリというカミキリが産卵して、樹皮下を食害し、所々に虫糞を排出していますものですが、庭木ではカミキリの産卵がない場合が多いものです。
このような症状になったら助ける方法はありません。
材線虫病は、前年枯死したマツから、5月中旬~8月上旬(最盛期:6月中旬頃)にかけて、体内に材線虫を沢山保持したカミキリが、羽化脱出してきます。
脱出したカミキリは近くにある健康なマツをかじり(後食)ますが、その時に材線虫を落下します。
傷口に落下した材線虫は材の中に入り込み、材内を移動します。
材線虫が材内に入るとマツが過剰反応を起こして水の通る道を塞ぐため、水が針葉まで行かなくなります。
針葉は蒸散で葉面温度を保っているのですが、蒸散が出来なくなると葉面温度が上昇し、針葉は退色・枯死します。
マツは幹や枝に傷を受けると樹脂を滲出しますが、材線虫の材内密度がある程度高くなると樹脂を滲出しなくなります。
材線虫病の発生を防ぐには、
材線虫病の発生を防ぐには、カミキリの発生時期に薬剤の予防散布(5月中旬、6月上・中旬、6月下旬か7月上旬の3回)を行いカミキリの後食を防止するか、事前に材内に材線虫を殺虫又は増殖を防止する薬剤を施用(樹幹注入又は土壌灌注:薬剤により施用時期が異なる)する必要があります。
お盆頃になったら、一度自宅のマツの幹に2箇所くらい大きな釘を材に達するまで打ち込み、引き抜いた後から樹脂が流れ出るか否か確認されては如何でしょう。
樹脂が傷口から流れるようであれば今のところは一安心です。
ただ、10月上旬にもう一度確かめて樹脂が流れ出るようであれば、年度内に枯死する割合は5%程度の確立になります。(小河)